本文へスキップ

英会話・英語・英会話マスター・BBS・BBS英会話マスター

電話でのお問い合わせは0725-20-6686

〒595-0072 大阪府泉大津市松之浜町1-16-29

英国留学一人旅access

ストーリー 3

 ケンブリッジの駅はひっそりと静まり返っていた。三四郎が想像していたよりも以外と簡素で素朴であった。駅は目立たず、又立派でもなく、人も疎らに見かけられるぐらいである。ロンドンのリバプールストリート駅と大分違い、三四郎が抱いていた英国ケンブリッジのイメージとはかなりかけ離れていた。
 駅を出た三四郎は駅近くにあると聞いた三四郎の通うことになっている学校に向かった。学校へは入学手続きは済んでいたが、ホームステイ先が決まらず、学校側は三四郎が到着するまでには見つけると約束をしていて、この日、学校で知らされることになっていた。が、会う約束の時間からは一時間ぐらいは遅れていた。

 暫く歩くと、立て看板がありクックスクールの表示があった。クックスクールといっても料理学校ではないことは、先程別れたロジーナにも説明した。
 玄関の石段を上り白塗りのドアを開けようとする、コマ犬も勿論同行した。ドアが開かない。約束していた時間からは遅れていたが、まさかと思った。三四郎には一瞬どう対処して良いのか混乱した。というのも泊まるところも考えていなければ、知人もいない。学校関係者だけが頼りだったのです。

「え!」
 多分、上手くいくだろう、相手も三四郎の境遇を理解しているのだから、と、もしかしてと云うオプションを出来るだけ考えるのを回避したことが、裏目に出た。回避したことが、現実に起こり、まさかと云う気持ちが益々動揺を駆り立てる。しかし、どうにかしなければいけないことは明らかである。兎も角、気持ちを落ち着かせた。
 そして、よくよく周りを見渡し、何か連絡はないかと、ドアの周りをもう一度じっくり確認した。すると、ドアに小さな紙が差し込まれていた。三四郎はその紙切れを摘まんで取出した。

 それは、三四郎への連絡の手紙であった。
「Welcome to Cook school. This is your home stay addresss.」

 少々先行きが思いやられそうにも思えたが、兎も角救われた。三四郎は早速世話になる住所が書かれたホームステイ先の家に向かうことにした。
 頭上にはこのとき、どこかひっそりと色あせた薄曇りの空が一面に拡がっていた。生まれて初めての海外初日にしては、なんてしけた空模様なのだろう。しかし、その陰気な空がどうも色あせた英国風なブロック造には妙に溶け込んでいた。
 三四郎は学校の前の道路でコマ犬を連れて一人、タクシーを待ったが、幾ら待っても一向にタクシーらしき車など通る気配はない。そしてその時、駅前のタクシー乗り場を思い出し、三四郎はもう一度駅に戻ることにした。と、運よく黒塗りのロンドンタクシーとは行かないが、タクシーが一台が止まっていた。英国でタクシーを乗るのはこれが初めてである。

「This please.」
 三四郎はそういってホームステイ先の住所の書いた紙切れを見せた。中年の陰気そうな、やけに鼻のデカい運転手は、新聞を読んでいた眼鏡を、デカ鼻にそって下にずらすと、三四郎を一瞥した。そして、又眼鏡を直してホームステイ先の住所の書いた紙を今度は暫く覗く。その時ふと、ヒースロー空港のティケット販売所であった係員を思い出して少々不安になった。が、間もなくデカ鼻は頷いた。
 タクシーはケンブリッジのメインストリートを通り抜け郊外に向かう。途中、途方もなく大きな公園に驚かされた。そこは所々周りに大木が立っているだけで、唯だだっ広い、本当に芝生だけが拡がる公園であり、サッカー場が4つ程出来る広さである。その大きな公園を時折横切る人が妙に小さく映っていた。日本の公園とはかなり様相が違う。
 
 タクシーはどんどん郊外へと向かう。同じような二階建ての集合住宅が、几帳面に整備され建ち並ぶ風景の住宅地に差し掛かった。
 ちょっと待てよ。ところで英国のタクシーではチップが必要だったのかな。待て待て、チップはきっとティップに違いない。チップはポテトチップであり、チケットを購入した時の、チケットがティケットだったのと同様にティップに違いない。ティップがチップでチケットがティケット、いやいや、違うか、ええい面倒だ。兎も角、危うし。これでは日本で英語だと理解して覚えていたことが、本当に混乱して迷惑である。それでティップは必要なのか。

 そうこう、三四郎が思案している内にもタクシーは、どうやらホームステイ先であろう灰色のブロック造りの建物の前に停車した。当然、既に到着してしまったからには、ゆっくりと思案しているわけにもいかない。兎も角三四郎は運転手に料金を支払うことにした。と、ちょうどこのとき料金メーターには、手ごろなつりの端数が出てきたこともあって、支払いを受け取るため振り返る運転手に、一度三四郎は咳払いをすると、待っていたように紙幣を手渡し同時にこう言った。
「ザ レスト イズ ティップ フォ ユウ」
 三四郎はティップの話は前から聞いていて多少は知っていたものの、実際はティップの経験はありません。そこで慣れないものだから、フォ ユウ の後でついつい、どうぞと手を差し出した。それがどうもおつりを頂戴と云ったように手を出した動作に思われて、少々デカ鼻とのやりとりがギクシャクしてバツが悪かった。
 まあいいか、デカ鼻は少々躊躇しながらも礼を言って、トランクからコマ犬を出してくれた。そしてホームステイ先の住所の二階建ての集合住宅の方角の建物を指さした。三四郎は犬を連れって、運転手が指し示す方向の深緑色に塗られた玄関ドアの建物に向かって歩を進め、着くと呼び鈴を二度鳴らした。
 その時はもう、振り返ると既に先ほどのタクシーは居なくなっていた。

 まもなくして、これも眼鏡を掛けた細身の女性がドアを開けて現れた。
「 I am 三四郎。 I am from Japan.」
 三四郎がそこまで話すと眼鏡の女性は、彼を待っていたかのように返答した。
「Welcome to Cambridge, Sanshiro.」
 彼女は三四郎に歓迎の笑みを漏らすとすぐに家の中に招いた。顔立ちから察すれば、五十過ぎくらいのとても優しそうな人のように思われた。

 居間に通され三四郎は勧められるままにソファーに腰を下ろした。すると、間もなくしてご主人であろう背の高い骨格の良い男性が現れ紹介された。婦人の名前はウエンディーで、ご主人はビルである。ビルは何故か薄く色が入った眼鏡をしていて、ウエンディーのように決して優しそうな顔立ちでは到底なかった。
 ビルは三四郎にその後、家の中を案内した。一階は居間とダイニングキッチン、そしてトイレがあり、二階には三つの部屋とトイレ付バスルームがあった。お世辞にも大きな家とは言えない。

 三四郎の部屋は東側の一室に決まった。その部屋は六畳ほどの広さにベッドとサイドテーブル、そして備え付けの洋服ダンスがあった。以前その部屋は彼らの娘が使っていた部屋であったそうだ。又、小さな窓が一つあり、裏庭の大きな幹の大木越しに芝生を敷き詰めたサッカー場のような広場が眺められ、その周りにもここと同じようなブロック造の集合住宅が規則正しく整列して建ち並んでいる。英国は芝生と整列がとても好きな几帳面な国民性なのだとふと思い、荷物を置くと再び居間に戻った。

 ウエンディーは紅茶とクッキーを用意していた。紅茶を飲みながらビルはホームステイについて説明した。ビルは何処となく失礼だとは思ったが、マフィアの雰囲気を持った風貌で坊主頭の薄サングラスで妙にホームステイ先のホストとしては不似合いであった。
 ホームステイでは朝食と夕食が出され、衣類は洗濯していただけるそうだ。学校まではバスで二十分程と近い。

 ところで、ビルやウエンディーと話しはしているものの、どうも正直言って二三割程度しか話の内容は理解できていない。否、もしかするとそれ以下かもしれない。日本で相当英語の勉強はやったつもりであったが、どうも役に立つ勉強ではなたったようだ。
 早々二人の会話で最初からつまずいたのが、ホストのウエンディーの名前である。三四郎はウエンディーと言っているのであるが、どうもこれが違うと言われて何度も言い直された。挙句の果てにはウエンディーの文字をビルは紙に書き出し指で指示した。
「This is Wendy.」
 どうも最初のWの音が違うようである。ビルは人相とは反比例して丁寧に根気よくWの発音を繰り返した。”ウ”と口の中に十分空気をためて、ほほが膨らむぐらい息をためて、”エンディー”で一気に息を出す。
「Wエンディー」
 三四郎は口に一杯息を溜め”ウ”を、そして、”エンディー”で一気に出した。
「This is my wife.」
 ビルは初めて首を縦に頷いて安心した。

 実はWの音が頬を膨らまして発音すること自体、三四郎は知らなかった。当然知らないものだから発音できないのは当たり前たっだのである。
 
 発音まで駄目では、これは益々思いやられる。一体全体知らない音が幾つあるのか。三四郎は全く自らの英語に不安を感じた。兎も角、焦らず、諦めず、一歩一歩確実に学ぶことである。まだ勉強は始まったばかりなのだから。今更くよくよしても仕方がないと自らを慰めるしかなかった。  


ストーリー 4

 次の日、その日は日曜日ともあって、ビルとウエンディーは三四郎を連れてケンブリッジの街を案内することになった。
 サングラスのマフィアは彼には不釣り合いな小さなフィアット車に大柄の身体を丸めて運転した。先ずは三四郎が通う学校にいった。勿論、ここは先日訪問済みである。それから、街の図書館に美術館等々。

 三四郎は郊外の街をドライブするうちに、珍しい英国独特の道路システムに感激した。郊外はとても信号が少ない。それでいて信号なしでも十字路などもスムーズに車は流れる。日本ではあまり見かけられない円形の誘導方向変換である。確かフランスのパリの凱旋門にもこのシステムがあった。十字路の真ん中が円形になって、交差点を回って方向転換をする。円を回っている車が優先で方向転換ができる。実に合理的である。周りに車も居ないのに信号が赤で夜中、ぽつりと停車しているのは、本当に奇妙で不思議な光景である。

 ビルの知人宅にも訪問した。
「This is Sanshiro. He came from Japan.」
 知人宅には老夫婦が住んでいた。歳の頃は六十半ばくらいで、気のいい夫婦である。彼らは二人して居間でテレビを見ていた。三四郎は借りてきた猫のように静まり返っていたが、彼の話題は事欠かなかった。それは全て紋付き袴のおかげである。
「come down, Tom.」
 暫くすると、老夫婦の声で一人の男性が二階から降りてきて、居間のソファにどっかと腰を下ろす。最初は遠慮のない立ち振る舞いから、てっきり彼らの息子だと思った。が、実はそうではなかった。

「This is Tom from Hungary.」
歳のころなら三十代半ばの雰囲気の男性であったが、実際は二十四歳だそうだ。如何にも容姿が年配に見えた。彼はここに半年程滞在していて、ケンブリッジ大学に通っているそうだ。老夫婦はトムをとても勤勉で頭の良い子であると褒めていた。

 月曜から学校が始まる。学校まではバスで通うことになっていた。家の近くにはバス停があり、そこから市内行きのバスで学校に向かう。学校は既に訪問済みだったので心強かった。

 早朝、三四郎は一人バスを待った。しばらくすると早速バスが来た。バスはあの赤い二階建てバスである。バスの一階は禁煙で二階は喫煙が許されている。三四郎は一階のそれも出口の側で居ることにした。まもなく車掌が運賃を徴収に来た。
「フィフティー プリーズ。」
 これがどうも聞き取れない。十五ともとれるし、聞きようによっては、五十ともとれる。三四郎は一応五十を用意した。車掌はそれを受け取ってつり銭なかった。何度も聞き耳を立てていると、どうも多分、前にアクセントがあるのが五十で、後ろにアクセントがあるのが十五なのだろう。

 二階建てのバスはカーブを曲がる度に常に大きく車体が傾くようになるので、時折このままひっくり返るのではと不安にもなった。バスは市内に入ったかと思うと直ぐに学校の近くのバス停に着いた。今日はグループ分けの試験がある日である。
 学校は休日とは打って変わって、沢山の学生が集まっていた。どうも日本人は三四郎だけのようだ。学校は一見すると一般の二階建て住居のようで、白色を基調とした建物であった。玄関を入ると直ぐに階段があり、日本住居のようでも、勿論靴を脱ぐようなことはない。奥に進むと結構大きな中庭があり、芝生が一面に敷いてある。休憩時間にはそこで十分くつろげるようになっていた。
 掲示板にはそれぞれ組み分けを受ける試験のグループが既に張られていた。試験は直ぐに始まった。三四郎は試験のための英語勉強は十分日本でやってきたので、試験には自信があった。
 教室に入ると、八人ほどの生徒が既にいた。チャイムと共に一人の普段着の紳士が入ってきた。まもなく試験の用紙が配られた。手渡された用紙を見たが、問題用紙は表裏共に白紙であった。とっさにどうなっているのか理解できない。すると、その教師と思われる男性が黒板にその試験の課題を書いて出て行った。実にあっけないものである。
「自分の健康維持について書いてください。」
 三四郎は只々驚くばかりであった。試験と言えば、日本の試験を思って疑わなかった。正に思い込みであった。驚いてばかりもいれないのは重々解っていましたが、実際どうしたらよいのか、手が付けられなかったのが本音のところである。試験で山が大外れした心境です。しかし、白紙をずっと見ていても前には進みません。兎も角三四郎は文章を作れるだけ作ってみることにしたが、当然自信はない。
 結局、答案用紙には十行も文章が作れなかったし、当然まとまりもない。日頃行っていた試験とは全く違っていたからです。
 その日はそれで授業が終わってしまいました。学校の授業は二部制になっていて午前と午後の部があり、三四郎は午前の部であった。

 ウエンディーとビルには子供が居る。子供と言っても十六歳と二十歳の男子、それに十八歳の女子である。女の子は家を出て別の街で暮らしているようだ。男の子の名前はニックとジョーである。彼らにはまだ会っていない。
 ウエンディーとビルは通常、仕事が終わるのが、午後五時、所謂よく言う9 to 5 である。午前九時に始まり、午後五時に終わる。自宅近くに職場があるので、大体五時半ぐらいには帰宅して夕食は六時半ぐらいから始まる。
 その夜はウエンディーとビル、そして三四郎の三人で夕食を取った。夕食のメニューはフライパンで焼いた鶏肉の上に白いルーが覆っている、そしてブロッコリーと多めのポテトが同じ皿に添えられていた。和食は当分お預けである。
 ビルは食事中に三四郎に提案した。通常学校に通う生徒は自転車通学が殆どのようである。ケンブリッジ自体はそれほど大きくない街であり、学校にも近いし、何時どこでへ外出するにも自転車の方が便利だからだ。そして三四郎が短期間の滞在ともあり、中古の自転車を購入してみてはどうかとビルはアドバイスした。三四郎は直ぐに了解した。というのも授業が終わると、実際多くの生徒はビルが言ったように自転車で帰宅していた。

 三四郎は夕食を済ませると、直ぐに二階の自分の部屋に行き英語の勉強をした。今朝の事で学校での三四郎の英語の実力が確認され、とても意気消沈していた。早く先ずは英語が上手くなる必要がある。焦らずにはおれなかった。というのも、英語学校終了の後、西欧を見聞する一人旅の計画がくるってくるからである。

 翌日、各クラスが決まる。三四郎はマーガレット先生のクラスになった。クラスのメンバーはマーガレット先生の自己紹介の後、一人ずつ自らの自己紹介をやることになった。

 マーガレット先生:英国人、二児の母、幾分細身、栗色のカーリーロングヘヤー、料理が好き、顔立ちは映画ダイハードの主演の奥さん、若いときに世界旅行をした経験あり、親しみ安い性格。しかし、どうも一見すると先生と云う雰囲気はなく、どう見ても家庭の主婦のようである。
 キャシー:スイス人、小柄な女性、顔立ちがかわいいタイプ。英語は少々出来るようで勉強家のような女の子。アルプスのハイジーのような子。
 トーレー:ブラジル人、ちりちりのショートヘヤー、大柄な青年。親しみやすい人柄だが、余計なことをしそうなおちょこちょい。英語よりもポルトガル語を頻繁に話す。陽気な性格。
 マシュー:フランス人、神経質そうな好青年。余り口数が多くなく、漫画が得意。細身の思慮分別がありそう。
 アントン:スペイン人、一番歳が若そう、十七歳程度。恥ずかしがり屋で無口な青年、がり勉タイプで常に本を持参。
 マリー:イタリア人、活発な女性。ハキハキ自己紹介をする。スキーが得意で聡明で陽気な子。世話好き。
 三四郎:日本人、中肉中背、弱気で慎重派。少々頑固、読書が好き。

 英語のレベルは似たり寄ったりのようだ。当然クラス分けをしたのであるから納得がいく。それにしても三四郎は自らの英語レベルには今さらのようにがっかりさせられた。三四郎の自己紹介はクラスのだれよりも直ぐに終わってしまった。恥ずかしがり屋で余り話が出来ないというよりも、英語による表現力が全く貧弱であった。三四郎は益々痛感した。もっともっと勉強しなければいけない。

 自己紹介が済むと、教科書が配られ、教科書についてマーガレット先生は長々と本筋からそれて説明した。次に授業の時間割が発表され、一日の授業は又しても終わってしまった。
 三四郎は街の図書館へ行くことにした。相当に勉強しなければ、帰国までに西欧見聞どころか、片言の英語すらまともに話せないという危惧を感じた。

 三四郎はその日から午前中は学校で勉強して、午後は図書館、夕方は帰宅し食事の後、午後十一時まで自宅勉強に励むことにした。まるで日本での受験勉強の再来である。

 三日目のこと、授業が終わり図書館に向かおうとした三四郎に、好青年のマシューと明るいマリーが声をかけてきた。

「How about lunch with us?」
 躊躇する三四郎にマシューが誘ってきた。
「There is a good coffe shop near here. Let's go.」
 マリーが言った。三四郎は断る勇気も持たずに、マリーに促されO.Kと返答した。

 そのコーヒーショップはカフェテリア方式になっていて、カウンター越しにサンドイッチや果物、そしてデザートなどがあって、好きなものを選び、最後に飲み物を注文して会計をするようになっている。
 今朝から曇りがちで少々肌寒くも感じられる天気だったせいか、マシューとマリーはショーケースのケーキやサンドイッチを選んで最後に温かい紅茶を注文した。
 さて、三四郎の順番である。彼はドーナツ2個にコーヒーを注文することにした。
「コーヒー アンド ドーナツ ツウ。」
 すると、淡いピンクのユニフォームに白のエプロンをした、かわいいウエイトレスは、小声だったのか、青い瞳にクエスチョンマークを映して首を傾けた。三四郎は次に多少大きめの声で繰り返した。

コーヒー アンド ドーナツ ツウ。」

 しかし、一向に理解しているようには見えません。
 ”あれ!。”と思った瞬間、もしかしてとも思った。すぐに何度か言い直してみたのですが、一向に上手くいきません。当然、間もなく三四郎の後ろにお馴染みの列ができはじめた。
 すると、今度は三四郎が閉口してパニックになり始めたのを見て、ピンクのユニフォームの少女までがさすがに少々混乱気味になった。三四郎はもうこの場を早くおさめたく、なりふり構わず、コーヒーとドーナツをジェスチャーをする始末です。
 すると、やっと店員は理解してくれたのか、大きく頭を上下させた。一安心である。が、しかし一安心したのもつかの間、結局トレーに置かれた注文品はコーラーとドーナツ一個であった。
 当然、内気な三四郎はもう一度チャレンジして、コーヒーとドーナツ2個を獲得する試みよりも、このとき、周りの状況からやっとオーダーが終了したことの安堵を選択した。

 マシューとマリーはトレーに置かれた氷入りのコーラーを見て、しかめ面でこう言った。
「Do you like cold coke in this cold weather?」
 
 三四郎はこう返答するしかなかった。
「Yes, I do.」

ストーリー 5